ョり居たるあり。いづれもピニエルリ[#「ピニエルリ」に傍線]が風俗畫の拔け出でたるかと怪まるゝばかりなり。
空氣は鼠色にて雨少し降れり。ヱズヰオ[#「ヱズヰオ」に二重傍線]の山もカプリ[#「カプリ」に二重傍線]の島も見えず。葡萄の纏ひ付きたる高き果樹と白楊との間には、麥の露けく緑なるあり。夫人我等を顧みて、見給へ、此野はさながらに饗應のむしろなり、麪包《パン》あり、葡萄酒あり、果《このみ》あり、最早わが樂しき市《まち》と美しき海との見ゆるに程あらじといひぬ。
夕に拿破里に着きぬ。トレド[#「トレド」に二重傍線]の街の壯觀は我前に横はりぬ。(原註。羅馬及ミラノ[#「ミラノ」に二重傍線]にては大街《おほどほり》をコルソオ[#「コルソオ」に二重傍線]と曰ひ、パレルモ[#「パレルモ」に二重傍線]にてはカツサロ[#「カツサロ」に二重傍線]と曰ひ、拿破里にてはトレド[#「トレド」に二重傍線]と曰ふ。)硝子燈と彩《いろど》りたる燈籠とを點じたる店相並びて、卓《つくゑ》には柑子《かうじ》無花果《いちじゆく》など堆《うづたか》く積み上げたり。道の傍には又魚蝋を焚き列ねて、見渡す限、火の海かとあやまた
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