フ初の如く坐して繰車《くりぐるま》まはせるあり。黒地《くろぢ》に畫ける像の如し。座のめぐりには、新き炭を添へて、その煖氣は室に滿ちたり。われは客の、彈《たま》は脇を擦過《かす》りたり、些《いさゝか》の血を失ひつれど、一月の間には治すべしといふを聞き得たり。
 わが頭を擡《もた》げしを見て、われを鞍に縛《ばく》せし男のいふやう。客人醒め給ひしよ。十二時間の熟睡は好き保養なるべし。こゝなるグレゴリオ[#「グレゴリオ」に傍線]は羅馬より好き信《たより》をもて來たり。そはおん身の喜び給ふべき筋の事なり。手を下しゝはおん身に極つたり。時も所も符を合す如し。驕《おご》りたる評議廳の官人は、おん身がために、容赦なくその長裾《ちやうきよ》を踏まれぬと見えたり。お身の大膽なる射撃に遭ひしは、評議官の從子《をひ》なりき。これを聞きてわれは僅に、命にはさはらずやと問ふことを得き。グレゴリオ[#「グレゴリオ」に傍線]の云はく。先づ死なで濟むべし。醫者は然《しか》云ひきとぞ。鶯の如き吭《のど》ありといふ、美しき外國婦人の夜を徹《とほ》して護り居たるに、醫者は心を勞し給ふな、本復《ほんぷく》疑なしといひきとぞとい
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