なき滑稽の葛藤を惹起せり。主人公の外なる人物には人のおのれを取扱ふこと一種の毒藥の如くならんことを望める俳優をのみ多く作り設けたり。かくいふをいかなる意ぞといふに、そは能く人を殺し又能く人を活す者ぞとなり。此群に雜《まじ》れる憐むべき詩人は、始終人に制せられ役せられて、譬へば猶犧牲となるべき價なき小羊のごとくなり。
喝采の聲と花束の閃《ひらめき》は場《ぢやう》に上りたるアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を迎へき。その我儘にて興ある振舞、何事にも頓着せずして面白げなる擧動を見て、人々は高等なる技《わざ》といへど、我はそを天賦の性《さが》とおもひぬ。いかにといふに、姫が家にありてのさまはこれと殊なるを見ざればなり。その歌は數千の銀《しろかね》の鈴|齊《ひとし》く鳴りて、柔なる調子の變化|極《きはまり》なきが如く、これを聞くもの皆頭を擧げて、姫が目より漲《みなぎ》り出づる喜をおのが胸に吸ひたり。姫と作譜者と對して歌ふとき相代りて姫男の聲になり、男姫の聲になる條《くだり》あり。この常に異なる技は、聽衆の大喝采を受けたるが、就中《なかんづく》姫が最低の「アルトオ」の聲を發し畢《をは》り
前へ
次へ
全674ページ中209ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング