とて、百「スクヂイ」の爲換《かはせ》を送り給ひぬ。我はあまりの嬉さに、西班牙《スパニア》磴《いしだん》を驅け上りて、ペツポ[#「ペツポ」に傍線]のをぢに光ある「スクウド」一つ抛げ與へ、そのアントニオ[#「アントニオ」に傍線]の主公《だんな》と呼ぶ聲を後《しりへ》に聞きて馳せ去りぬ。
 頃は二月の初なりき。杏花《きやうくわ》は盛に開きたり。柑子《かうじ》の木日を逐ひて黄ばめり。謝肉祭《カルネワレ》は既に戸外に來りぬ。馬に跨り天鵞絨《びろうど》の幟《のぼり》を建て、喇叭《らつぱ》を吹きて、祭の前觸《まへぶれ》する男も、ことしは我がためにかく晴々しくいでたちしかと疑はる。ことしまでは我この祭のまことの樂しさを知らざりき。穉《をさな》かりし程は、母上我に怪我せさせじとて、とある街の角に佇《たゝず》みて祭の盛《さかり》を見せ給ひしのみ。學校に入りてよりは、「パラツツオオ、デル、ドリア」の廡《ひさし》作《づく》りの平屋根より笑ひ戲るゝ群を見ることを許されしのみ。すべて街のこなたよりかなたへ行くことだに自由ならず。矧《まして》や「カピトリウム」に登り、「トラステヱエル」(河東の地なり、テヱエル[#
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