艪ェために泣くなり。我が遠からず、分れ去るべきをおもひて泣くなり。ボルゲエゼ[#「ボルゲエゼ」に傍線]の主人の君は、「ジエスヰタ」派の學校の一座を買ひて我に取らせ給ひしかば、我はカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の野と牧者の媼《おうな》とに別れて、我行末のために修行の門出せんとす。ドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]は歸路に我にいふやう。我目の明きたるうちに、おん身と此野道行かんこと、今日を限なるべし。ドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]などの知らぬ、滑《なめらか》なる床、華やかなる氈《かも》をや、おん身が足は踏むならん。されどおん身は優しき兒なりき。人となりてもその優しさあらば、あはれなる我等夫婦を忘れ給ふな。あはれ、今は猶|果敢《はか》なき燒栗もて、おん身が心を樂ましむることを得るなり。おん身が籘を焚く火を煽《あふ》ぎ、栗のやくるを待つときは、我はおん身が目の中に神の使の面影を見ることを得るなり。かく果敢なき物にて、かく大なる樂をなすことは、おん身忘れ給ふならん。カムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の野には薊《あざみ》生ふといへど、その薊には尚紅の花咲くことあり。富貴の家なる、滑
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