ッりたらましかば、その三美《ハリテス》の像の最も少きをば、必ず此女の姿によりて摸し成ししならん。(カノワ[#「カノワ」に傍線]は彫匠《てうしやう》なり。ポツサニヨ[#「ポツサニヨ」に二重傍線]に生れヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]に歿す。三美の像は獨逸ミユンヘン[#「ミユンヘン」に二重傍線]に在り。)われは嘗て晩餐式ありしとき、寺院にて見、又|聖摩西《サン、モセス》の劇場にて一たび見たり。その高根の花に似て、仰ぎ看るだに容易《たやす》からぬを恨むものは、獨り我のみにはあらず。おほよそヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の少年紳士にして同じ恨を抱かぬはあらざるならん。只だ人々と我と相異なるは、彼は懸想《けさう》し我は懸想せざるのみ。我俗眼もて見れば、彼人は餘りに天人めきたり。されど天人は崇拜の對象とすべきならん。「アバテ」はいかに思ひ給ふといふ。われは此語を聞いて、フラミニア[#「フラミニア」に傍線]の事を思ひ出し、喜の色は我面より消え失せたり。ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]。酒は好し。風波は我|筵《えん》の爲めに歌舞す。いかなれば君|愁《うれひ》の色を見せ給ふぞ。われ。市長《ボデスタ》は客を招き筵を張ることありや。ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]。稀にそのことなきにあらず。されど招請《せうせい》を慎《つゝし》むこといと嚴《おごそか》なり。矧《いはん》や彼人は物に怯《おそ》るゝこと鹿子《かのこ》の如く、同じ席に列《つらな》るものもたやすく近づくこと能はざるを奈何せん。われは必ずしもかの人心より此の如しと説かず。そは人にめづらしがられんとてかく振舞ふ女も少からねばなり。そが上に彼人の身上には明白ならざる處なきにしもあらず。わが聞くところに依れば、市長に二人の妹ありて、皆久しく遠國に住めりき。その最も少《わか》き方の妹は希臘人に嫁ぎたりしに、その夫婦の間に彼の奇《く》しき少女はまうけられぬといふ。今一人の妹は猶|處子《しよし》なり、しかも老いたる處子なり。四とせ前の頃彼の少女を伴ひて歸り來りしは、此の老處子に他ならざりき。
 夜の如き闇黒は急に酒亭《オステリア》を襲ひて、ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]が話の腰を折りたり。あなやと驚く隙《ひま》もあらせず、赫然《かくぜん》たる電光は身邊を繞《めぐ》り、次いで雷聲大に震ひ、我等二人をして覺えず首を低《た》れて、十字を空
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