を地上に覆《くつがへ》して、これを焚いて光を放ち熱を發せしむるに及ばざりき。こは濫用して人に禍《わざはひ》せしならねど、遂に徒費して天に背《そむ》きしことを免れず。そも/\我は誓約の良心を縛《ばく》するあるにあらず、責任の云爲《うんゐ》を妨ぐるあるにあらずして、何故に我前に湧ける愛の泉を汲まざりしぞ。かく思ひ續くれば、一種の言ふべからざる情はわが胸に溢れたり。これに名づけて自ら慊《あきたら》ざる情ともいふべきか。こは我慾火の勢を得て、我智慧を燬《や》くにやあらん。
我がサンタ[#「サンタ」に傍線]を畏れて走り避けしは何故ぞ。聖母《マドンナ》の像の壁上より落ちぬればなり。否々、※[#「金+肅」、第3水準1−93−39]《さ》びたる釘はいづれの時か折れざらん。まことに我をして走り避けしめしものは、我脈絡中なる山羊の乳のみ、「ジエスヰタ」派學校の教育のみ。われはサンタ[#「サンタ」に傍線]の艶色を憶ひ起して、心目にその燃ゆる如き目《ま》なざしを見心耳にその渇せる如き聲音《こわね》を聞き、我と我を嘲り我と我を卑《いやし》めり。何故に我は世上の男子の如く、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]の如くなることを得ざる。愛を求むるは我心にあらずや。我心は神の授け給ひし光明にあらずや。さらば愛を求むるは神にあらずや。此時我は此の如くに思議せり。此の如くに思議して、ヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の繁華をおもひ、その女《をみな》ありて雲の如くなるをおもひ、我血の猶熱せるをおもひ、忽ち聲を放ちて我少年の歌に和したり。
嗚呼、是れ皆熱の爲めに發せし譫語《うはごと》のみ、苦痛の餘なる躁狂《さうきやう》のみ。我に心の光明を授け給ひし神よ、我運命の柄を握り給ふ神よ。我は御身の我罪を問ひ給ふことの刻薄ならざるべきを知る。人の心中には舌頭に上《のぼ》すべからざる發作《ほつさ》あり、爭鬪あり。是れ吾人の清廉なる守護神の膝を惡魔の前に屈する時なり。世の能く欲して能く遂ぐる人々は、我がいたづらに欲せしところに就いて、自在に評論せよ。されど汝等は裁決せざれ。さらば汝等は裁決せられざるならん。汝等は呪誼《じゆそ》せざれ。さらば汝等は呪誼せられざるべし。我は實に此の如く思議せり。此の如く思議して、復た祷《いのり》の詞を出すこと能《あた》はずして寢たり。舟は穩《おだやか》に我夢を載せて、北のかたヱネ
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