下の人を思ふ如し、さるを若しそのアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]ならぬアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]又出でゝ、冷なる眼もて我を見ば、※[#「やまいだれ+差」、第4水準2−81−66]《い》えなんとする心の創は復た綻《ほころ》びて、却りてわれに限なき苦痛を感ぜしむるなるべし。
いと暑き日の午後《ひるすぎ》、われは共同の廣間に出でしに、緑なる蔓草の纏ひ付きたる窓櫺《さうれい》の下に、姫の假寢《うたゝね》し給へるに會ひぬ。纖手《せんしゆ》もて頬《ほ》を支へて眠りたるさま、只だ戲《たはぶれ》に目を閉ぢたるやうに見えたり。胸の波打つは夢見るにやあらん。忽ち微笑の影浮びて、姫の眠は醒めぬ。アントニオ[#「アントニオ」に傍線]そこにありや。われは料《はか》らずも眠りて、料らずも夢見たり。おん身はわが夢に見えしは何人の上なりとかおもふ。われ。ララ[#「ララ」に傍線]にはあらずや。この答はわが姫の目を閉ぢたるを見し時、心に浮びし人を指《さ》して言へるのみなりしに、期《ご》せずして中《あた》りしなり。姫。さなり。われはララ[#「ララ」に傍線]と共に飛行して、大海の上を渡りゆきぬ。海の中には一の島山《しまやま》ありき。その山の巓はいと高きに、われ等は猶おん身の物思はしげなる面持して石に踞して坐し給ふを見ることを得つ。ララ[#「ララ」に傍線]は翼を振ひて上らんとす。われはこれに從はんとして、羽搖《はたゝき》するごとに後《おく》れ、その距離|千尋《ちひろ》なるべく覺ゆるとき、忽ち又ララ[#「ララ」に傍線]とおん身との我側にあるを見き。われ。そは死の境界《きやうがい》なるべし。生きて千里《ちさと》を隔つるものも、死しては必ず相逢ふ。死は惠深きものにて、我に我が愛するところのものを與ふ。姫。われは遠からず尼寺に歸らんとす。これより後の我生涯は、おん身の爲めには死せると同じ。おん身は能く我を忘れずして、死後相見んことを期し給はんや。姫の此詞はいたく我心を動して、我をして輒《すなは》ち答ふること能はざらしめき。
ある日フランチエスカ[#「フランチエスカ」に傍線]夫人は姫を伴ひてヰルラ、デステ[#「ヰルラ、デステ」に二重傍線]の園の中をそゞろありきし給へり。我も亦許されてその後《しりへ》に從ひぬ。園は高き絲杉あるをもて世に聞えたるところなり。一行の人工の噴泉ある長き街※[#「木
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