辱《はづかし》めたり、我と決鬪せよといふ。其聲|極《きはめ》て冷《ひやゝか》に、極てあらゝかなりき。わが實を述べたる一語の、此の如く渠《かれ》を激せんことは、わが預期せざる所なりき。われは徐《しづ》かに、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]よ、そはよも眞面目なる詞にはあらじといひて、其手を握りしに、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は手を引き面を背《そむ》け、舟人に陸《くが》に着けよと命ぜり。老いたる方の漕手答へて、舟を停むべきところは、さきに漕ぎ出でしところの外|絶《たえ》て無ければ、是非とも島を一周せでは叶はずといひつゝ、※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]《ろ》を搖《うごか》す手を急にしたり。舟は深碧の水もて繞《めぐら》されたる高き岩窟《いはや》に近づきぬ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は杖を揮《ふる》ひて舷側の水を打てり。われは且怒り且悲みて、傍より其面を打ち目守《まも》りぬ。爾時《そのとき》年|少《わか》き漕手いと慌《あわた》だしく、龍卷(ウナ、トロムバ)と叫べり。その瞠視《みつめ》たる方を見れば、ミネルワ[#「ミネルワ」に二重傍線]の岬より起りて、斜に空に向ひて竪立《じゆりつ》せる一道の黒雲あり。形は圓柱の如く、色は濃墨の如し。その四邊《あたり》の水、恰も鍋中の湯の滾沸《こんふつ》せるが如くなり。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]はいづかたに避くるかと問へり。少年は後々《あと/\》といへり。われ。されば又全島を巡らんとするか。少年。風なき方の岩に沿うて漕がん。龍卷は島を離れて走る如し。翁。此小舟の若し岩に觸れて碎けずば幸なり。語未だ畢らず、龍卷の嚮《むき》は一轉せり。一轉して吾舟の方に進めり。その疾《と》きこと※[#「風にょう+(犬/(犬+犬))、第4水準2−92−41]風《へうふう》の如し。舟若し高く岩頭に吹き上げられずば、必ず岩根に傍《そ》ひて千尋《ちひろ》の底に壓《お》し沈めらるべし。われは翁と共に※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]《ろ》を握りつ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]も亦少年を扶《たす》けて働けり。されど風聲は早く我等の頭上に鳴りて、狂瀾は既に我等の脚下に翻《ひるがへ》れり。二人の漕手は異口同音に、尊きルチア、助け給へと叫びつゝ、※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]を捨てゝ跪拜せり。ジエンナロ[#「ジ
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