k柚《オレンジ》橄欖《オリワ》の林とは交る/″\これを覆へり。岸に沿へる處には、數軒の蜑戸《たんこ》と一棟《むね》の哨舍《ばんごや》とを見る。稍※[#二の字点、1−2−22]《やゝ》高き林木の間に、屋瓦の叢《そう》を成せるはアンナア、カプリイ[#「アンナア、カプリイ」に二重傍線]の小都會なり。一橋一門ありてこれに通ず。一行は棕櫚《しゆろ》の木立てるパガアニイ[#「パガアニイ」に二重傍線]が酒店の前に歩を留めつ。
我等はこゝに朝餐《あさげ》して、公子夫婦は午時《ひるどき》まで休憩し、それより驢《うさぎうま》を倩《やと》ひてチベリウス[#「チベリウス」に傍線]帝の別墅《べつしよ》の址《あと》を訪はんとす。われは憩はんこゝろなければ、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]と共に此島を一周し、南に突き出でたる大石門をも見ばやとて、漕手二人を呼び、岸なる舟に乘り遷《うつ》りぬ。
風少し起りたれば、我等は行程の半ばばかり帆の力に頼ることを得べし。巖壁に近き處には、漁人の網を張りたるあれば、舟はこれを避けて沖の方に進みぬ。既にして奇景の人目を驚すに足るものあるを見る。灰色なる巨石の直立すること千丈なるあり。その頂は天を摩し、所々僅に一石塊を容《い》るべき罅隙《かげき》を存じて、蘆薈《ろくわい》若くは紫羅欄《あらせいとう》これに生じたり。青き焔の如き波に洗はれたる低き岩根には、紅殼《べにがら》の毛星族《まうせいぞく》(クリノイデア)いと繁《しげ》く着きたるが、その紅の色は水を被《かぶ》りて愈※[#二の字点、1−2−22]紅に、岩石の波に觸れて血を流せるかと疑はる。
既にして我等は海を右にし島を左にする處に至りぬ。水を呑吐する大小の窟《いはや》許多《あまた》ありて、中には波の返す毎に僅かに其天井を露《あらは》すあり。こは彼妙音の女怪のすみかにして、草木繁茂せるカプリ[#「カプリ」に二重傍線]の島は唯だこれを蓋《おほ》へる屋上《やね》たるに過ぎざるにやあらん。
漕手の一人なる白髮の翁のいふやう。這裏《このうち》には惡しきもの住めり。人若し過《あやま》ちて此門に入るときは、多くは再びこれを出づることを得ず。その或は又出づるものは、痴なるが如く狂せるが如く、復《ま》た尋常人間の事を解せずといふ。往手《ゆくて》のかたに稍※[#二の字点、1−2−22]大なる一窟あり。されど若し舟に棹《さ
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