、》の上を踏みしだきつゝ徐《しづ》かに歩める人々を追ひ越し行きぬ。
 アントニオ[#「アントニオ」に傍線]、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]と呼ぶ公子の聲|※[#「二点しんにょう+向」、第3水準1−92−55]《はるか》なる後に聞えて、我は始て我にかへりぬ。兎をや獵《かり》せんとする、否《さら》ずば天馬空を行くとかいふ詩想の象徴をや示さんとする、と公子語を繼いで云へば、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]、否、われ等の※[#「足+圭」、第4水準2−89−29]歩《きほ》に蹇《なや》める處を、渠《かれ》は能く飛行すと誇るなるべし、いざ我が濟勝《さいしよう》の具の渠に劣らぬを證せんとて、我傍に引き傍《そ》うて走り出しぬ。公子|後《しりへ》より、汝等は我が夫人の手を拉《ひ》きて同じ戲をなすことを要《もと》むるにやといふとき、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は直に歩を駐《とゞ》めたり。
 酒店に歸り着きし後は、瞽女《ごぜ》は影だに見えざりき。その叫びし聲の猶絶間なく耳に聞ゆるを、怪しとおもひてつく/″\聽けば、そは我|心跳《しんてう》のかく聞做《きゝな》さるゝにぞありける。嗚呼卑むべきは我心にもあるかな。少女が胸中の苦を永言《えいげん》して、これをして深く生涯の不幸を感ぜしめ、終にはその額に接吻して驚かしたるは何事ぞや。そが上にかの接吻は我が婦女に與へたる第一の接吻なり。少女の貧しきを侮《あなど》り、その目しひたるを奇貨として、我は我が未だ嘗て敢てせざりしところのものを敢てしたり。我はベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]を輕佻《けいてう》なりとせり。而《しか》るに我が爲すところも亦此の如し。現《げ》に塵の世に生れたる人、誰か罪業なきことを得ん。いかなれば我は自ら待つことの寛《ゆる》くして、人を責むることの酷なりしぞ。われ若し再び瞽女《ごぜ》に逢はば唯だ地上に跪いてこれに謝せん。
 一行は車に上りてサレルノ[#「サレルノ」に二重傍線]に歸らんとす。我は心に今一度瞽女を見んことを願ひしが、人に問ふことを憚りたり。忽ちジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]の案内者を顧みて、さるにても彼の目しひたる娘はいかにしたると問ふを聞く。案内者の一人答へてララ[#「ララ」に傍線]が事にて候ふや、海神《ポセイドン》祠《し》のほとりにやあるらん、常に彼處にあることを好めばといふ。ジエン
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