した。
「ああ、ぼくはあんまり幸福すぎるよ。」と、王子は、人魚のひいさまにいいました。「最上の望みが、しょせん望んでもむだだと[#「むだだと」は底本では「むただと」]あきらめていたそれが、みごとかなったのだもの、おまえ、ぼくの幸福をよろこんでくれるだろう、だっておまえは、どのだれにもまさって、ぼくのことをしんみにおもっていてくれたのだもの。」
こういわれて、人魚のひいさまは、王子の手にくちびるをあてましたが、心臓《しんぞう》はいまにもやぶれるかとおもいました。ふたりのご婚礼のあるあくる朝は、このひいさまが死んで、あわになって、海の上にうく日でしたものね。
[#空白は底本では欠落]のこらずのお寺の鐘が、かんかん鳴りわたりました。先ぶれは町じゅう馬をはしらせて、ご婚約《こんやく》のことを知らせました。あるかぎりの祭壇《さいだん》には香油《こうゆ》が、もったないような銀のランプのなかでもえていました。坊さんたちが香炉《こうろ》をゆすっているなかで、花よめ花むこは手をとりかわして、大僧正《だいそうじょう》の祝福をうけました。人魚のひいさまは、絹に金糸の晴れの衣裳《いしょう》で、花よめのなが
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