まいました。かわいそうに、ゲルダは、くつもはかず、手ぶくろもはめずに、氷にとじられた、さびしいフィンマルケンのまっただなかに、ひとりとりのこされて立っていました。
ゲルダは、いっしょうけんめいかけだしました。すると、雪の大軍が、むこうからおしよせてきました。
けれど、その雪は、空からふってくるのではありません。空は極光《オーロラ》にてらされて、きらきらかがやいていました。雪は地面の上をまっすぐに走ってきて、ちかくにくればくるほど、形が大きくなりました。ゲルダは、いつか虫めがねでのぞいたとき、雪のひとひらがどんなにか大きくみえたことを、まだおぼえていました。けれども、ここの雪はほんとうに、ずっと大きく、ずっとおそろしくみえました。この雪は生きていました。それは雪の女王の前哨《ぜんしょう》でした。そして、ずいぶんへんてこな形をしていました。大きくてみにくい、やまあらしのようなものもいれば、かまくびをもたげて、とぐろをまいているへびのようなかっこうのもあり、毛のさかさにはえた、ふとった小ぐまににたものもありました。それはみんなまぶしいように、ぎらぎら白くひかりました。これこそ生きた雪の大
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