いませんでした。ゲルダはおどりあがってよろこびました。そして夕日が、高いさくらの木のむこうにはいってしまうまで、あそびました。それからゲルダは、青いすみれの花がいっぱいつまった、赤い絹のクションのある、きれいなベッドの上で、結婚式の日の女王さまのような、すばらしい夢をむすびました。
 そのあくる日、ゲルダは、また、あたたかいお日さまのひかりをあびて、花たちとあそびました。こんなふうにして、いく日もいく日もたちました。ゲルダは花ぞのの花をのこらずしりました。そのくせ、花ぞのの花は、かずこそずいぶんたくさんありましたけれど、ゲルダにとっては、どうもまだなにか、ひといろたりないようにおもわれました。でも、それがなんの花であるか、わかりませんでした。するうちある日、ゲルダはなにげなくすわって、花をかいたおばあさんの夏ぼうしを、ながめていましたが、その花のうちで、いちばんうつくしいのは、ばらの花でした。おばあさんは、ほかのばらの花をみんな見えないように、かくしたくせに、じぶんのぼうしにかいたばらの花を、けすことを、ついわすれていたのでした。まあ手ぬかりということは、たれにでもあるものです。
「あ
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