せんでした。
「ことによると、この川は、わたしを、カイちゃんのところへ、つれていってくれるのかもしれないわ。」と、ゲルダはかんがえました。
 それで、だんだんげんきがでてきたので、立ちあがって、ながいあいだ、両方の青あおとうつくしい岸をながめていました。それからゲルダは、大きなさくらんぼばたけのところにきました。そのはたけの中には、ふうがわりな、青や赤の窓のついた、一けんのちいさな家がたっていました。その家はかやぶきで、おもてには、舟で通りすぎる人たちのほうにむいて、木製《もくせい》のふたりのへいたいが、銃剣《じゅうけん》肩に立っていました。
 ゲルダは、それをほんとうのへいたいかとおもって、こえをかけました。しかし、いうまでもなくそのへいたいは、なんのこたえもしませんでした。ゲルダはすぐそのそばまできました。波が小舟を岸のほうにはこんだからです。
 ゲルダはもっと大きなこえで、よびかけてみました。すると、その家のなかから、撞木杖《しゅもくづえ》にすがった、たいそう年とったおばあさんが出てきました。おばあさんは、目のさめるようにきれいな花をかいた、大きな夏ぼうし[#「ぼうし」に傍点]を
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