こんで、高くはねあがりました。その背中においはぎのこむすめは、ゲルダをのせてやりました。そして用心《ようじん》ぶかく、ゲルダをしっかりいわえつけて、その上、くらのかわりに、ちいさなふとんまで、しいてやりました。
「まあ、どうでもいいや。」と、こむすめはいいました。「そら、おまえの毛皮のながぐつだよ。だんだんさむくなるからね。マッフはきれいだからもらっておくわ。けれど、おまえにさむいおもいはさせないわ。ほら、おっかさんの大きなまる手ぶくろがある。おまえなら、ひじのところまで、ちょうどとどくだろう。まあ、これをはめると、おまえの手が、まるであたいのいやなおっかさんの手のようだよ。」と、むすめはいいました。
 ゲルダは、もううれしくて、涙《なみだ》がこぼれました。
「泣くなんて、いやなことだね。」と、おいはぎのこむすめはいいました。「ほんとは、うれしいはずじゃないの。さあ、ここにふたつ、パンのかたまりと、ハムがあるわ。これだけあれば、ひもじいおもいはしないだろう。」
 これらの品じなは、となかいの背中のうしろにいわえつけられました。おいはぎのむすめは戸をあけて、大きな犬をだまして、中にいれておいて、それから、よくきれるナイフでつなをきると、となかいにむかっていいました。
「さあ、はしって。そのかわり、その子に、よく気をつけてやってよ。」
 そのとき、ゲルダは、大きなまる手ぶくろをはめた両手を、おいはぎのこむすめのほうにさしのばして、「さようなら。」といいました。
 とたんに、となかいはかけだしました。木の根、岩かどをとびこえ、大きな森をつきぬけて、沼地や草原もかまわず、いっしょうけんめい、まっしぐらにはしっていきました。おおかみがほえ、わたりがらすがこえをたてました。ひゅッ、ひゅッ、空で、なにか音がしました。それはまるで花火があがったように。
「あれがわたしのなつかしい北極《オーロラ》光です。」と、となかいがいいました。「ごらんなさい。なんてよく、かがやいているでしょう。」
 それからとなかいは、ひるも夜も、前よりももっとはやくはしって行きました。
 パンのかたまりもなくなりました。ハムもたべつくしました。となかいとゲルダとは、ラップランドにつきました。
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  第六のお話

    ラップランドの女とフィンランドの女

[#挿絵(fig42387_06.p
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