法が消えてなくなりました。
 そのとき参事官ははっきりと、すぐ目のまえに、街灯がひとつ、かんかんともっていて、そのうしろに大きな建物の立っているのをみつけました。そこらじゅうみまわしても、おなじみのあるものばかりでした。それは、今の世の中で毎日みているとおりの東通でした。参事官は玄関の戸に足をむけて腹ンばいになっていたのです。すぐむこうには町の夜番が、すわって寝込んでいました。
「やあたいへん、おれは往来で寝て、夢をみていたのか。」と、参事官はさけびました。「なるほど、これは東通だわい。どうもなにかが、かんかんあかるくって、にぎやかだな。それにしてもいっぱいのポンスのききめはじつにおそろしい。」
 それから二分ののち参事官は、ゆうゆうと辻馬車のなかにすわって、クリスティアンス ハウンのじぶんの家のほうへはこばれて[#「はこばれて」は底本では「はこぱれて」]いきました。参事官はいましがたさんざんおそろしい目や心配な目にあったことをおもいだすと、今の世の中には、それはいろいろわるいことはあっても、ついさっきもっていかれた昔の時代よりはずっとましだということをさとりました。どうですね、参事官
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