の茎をくちばしでつつきました。それはいまのじぶんの大きさにくらべては、北アフリカのしゅろ[#「しゅろ」に傍点]の枝ほどもありそうでした。
すると、だしぬけにまわりがまっ暗やみになってしまいました。なにか大きなものが、上からかぶさって来たようにおもわれました。これはニュウボデルから来た船員のこどもが、大きな帽子を小鳥の上に投げかけたものでした。やがて下からぬっ[#「ぬっ」に傍点]と手がはいって来て、書記のひばりのせなかとつばさをひどくしめつけたので、おもわずぴいぴい鳴きました。そして、びっくりした大きな声で「このわんぱく小僧め、おれは警察のお役人だぞ。」とどなりました。けれどもこどもには、ただぴいぴいときこえるだけでした。そこでこの男の子は鳥のくちばしをたたいて、つかんだままほうぼうあるきまわりました。
やがて、並木道《なみきみち》で、男の子はほかのふたりのこどもに出あいました。身分をいう人間の社会では、いい所のこどもというのですが、学校では精紳がものをいうので、ごく下の級に入れられていました。このこどもたちが、シリング銀貨二、三枚で小鳥を買いました。そこで、ひばりの書記は、またコペンハーゲンのゴーテルス通のある家へつれてこられることになりました。
「夢だからいいようなものだが。」と、書記はいいました。「さもなければ、おれはほんとうにおこってしまう。はじめに詩人で、こんどはひばりか。しかもわたしを小鳥にかえたのは、詩人の気質がそうしたのだよ。それがこどもらの手につかまれるようになっては、いかにもなさけない。このおしまいは、いったいどうなるつもりか、見当がつかない。」
やがて、こどもたちはひばりをたいそうりっぱなおへやにつれこみました。ふとったにこにこした奥さまが、こどもたちをむかえました。この子たちのおかあさまでしたろう。けれども、このおかあさまは、ひばりのことを「下等な野そだちの鳥」とよんで、そんなものをうちのなかへ入れることをなかなかしょうちしてくれません。やっとたのんで、ではきょう一日だけということで許してもらえました。で、ひばりは窓のわきにある、からッぽなかごのなかに入れられなければなりませんでした。「おうむちゃん、きっと、うれしがるでしょうよ。」と、奥さまはいって、上のきれいなしんちゅうのかごのなかの輪で、お上品ぶってゆらゆらしている大きなおうむにわら
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