ゼーロン
牧野信一
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)能《あた》わぬ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)結局|龍巻《たつまき》村の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]
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更に私は新しい原始生活に向うために、一切の書籍、家具、負債その他の整理を終ったが、最後に、売却することの能《あた》わぬ一個のブロンズ製の胸像の始末に迷った。――諸君は、二年程前の秋の日本美術院展覧会で、同人経川槇雄作の木彫「※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]」「牛」「木兎《みみずく》」等の作品と竝んで「マキノ氏像」なるブロンズの等身胸像を観覧なされたであろう。名品として識者の好評を博した逸作である。
いろいろと私はその始末に就《つ》いて思案したが、結局|龍巻《たつまき》村の藤屋氏の許《もと》に運んで保存を乞《こ》うより他は道はなかった。兼々《かねがね》藤屋氏は経川の労作「マキノ氏像」のために記念の宴を張りたい
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