的たらねばならぬのである。而してかかる多と一との媒介として、共栄圏という如き特殊的世界が要求せられるのである。
我国民の思想指導及び学問教育の根本方針は何処までも深く国体の本義に徹して、歴史的現実の把握と世界的世界形成の原理に基かねばならない。英米的思想の排撃すべきは、自己優越感を以て東亜を植民地視するその帝国主義にあるのでなければならない。又国内思想指導の方針としては、較もすれば党派的に陥る全体主義ではなくして、何処までも公明正大なる君民一体、万民翼賛の皇道でなければならない。
以上は私が国策研究会の求に応じて、世界新秩序の問題について話した所の趣旨である。各国家民族が何処までも自己に即しながら、自己を越えて一つの世界を形成すると云うことは、各国家民族を否定するとか軽視するとかと云うことではない。逆に各国家民族が自己自身に還り、自己自身の世界史的使命を自覚することによって、結合して一つの世界を形成するのである。かかる綜合統一を私は世界と云うのである。各国家民族を否定した抽象的世界と云うのは、実在的なものではない。従ってそれは世界と云うものではない。故に私は特に世界的世界と云
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