く、抽象的に選出せられるのでなく、歴史的に形成せられるのでなければならない。斯くして眞の共榮圈と云ふものが成立するのである。併し自己自身の中に眞の世界性を含まない單に自己の民族を中心として、そこからすべての世界を考へる單なる民族主義は、民族自己主義であり、そこから出て來るものは、自ら侵略主義とか帝國主義とか云ふものに陷らざるを得ないであらう。今日、英米の帝國主義と云ふものは、彼等の民族自己主義に基くものに外ならない。或一民族が自己自身の中に世界的世界形成の原理を含むことによつて始めてそれが眞の國家となる。而してそれが道徳の根源となる。國家主義と單なる民族主義とを混同してはならない。私の世界的世界形成主義と云ふのは、國家主義とか民族主義とか云ふものに反するものではない。世界的世界形成には民族が根柢とならなければならない。而してそれが世界的世界形成的なるかぎり國家である。個人は、かゝる意味に於ての國家の一員として、道徳的使命を有するのである。故に世界的世界形成主義に於ては、各の個人は、唯一なる歴史的場所、時に於て、自己の使命と責務とを有するのである。日本人は、日本人として、此の日本歴史的現
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