世界形成の原理が含まれて居るのである。
 世界的世界形成の原理と云ふのは各國家民族の獨自性を否定することではない、正にその逆である。世界と云へば、人は今尚十八世紀的に抽象的一般的世界を考へて居るのである。私の世界的世界形成と云ふのは、各國家各民族がそれぞれの歴史的地盤に於て何處までも世界史的使命を果すことによつて、即ちそれぞれの歴史的生命に生きることによつて、世界が具體的に一となるのである、即ち世界的世界となるのである。世界が具體的に一となると云ふことは各國家民族が何處までもそれぞれの歴史的生命に生きることでなければならない。恰も有機體に於ての樣に、全體が一となることは各自が各自自身となることであり、各自が各自自身となることは全體が一となることである。私の世界と云ふのは、個性的統一を有つたものを云ふのである。世界的世界形成の原理とは、萬邦各その所を得せしめると云ふに外ならない。今日の國家主義は、かゝる世界的世界形成主義に基礎附けられてゐなければならない。單に各國家が各國家にと云ふことではない。今日の世界状勢は世界が何處までも一とならざるべからざるが故に、各國家が何處までも各自に國家主義
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