的世界を構成することでなければならない。而して斯く歴史的地盤から構成せられた特殊的世界が結合して、全世界が一つの世界的世界に構成せられるのである。かゝる世界的世界に於ては、各國家民族が各自の個性的な歴史的生命に生きると共に、それぞれの世界史的使命を以て一つの世界的世界に結合するのである。これは人間の歴史的發展の終極の理念であり、而もこれが今日の世界大戰によつて要求せられる世界新秩序の原理でなければならない。我國の八紘爲宇の理念とは、此の如きものであらう。畏くも萬邦をしてその所を得せしめると宣らせられる。聖旨も此にあるかと恐察し奉る次第である。十八世紀的思想に基く共産的世界主義も、此の原理に於て解消せられなければならない。
今日の世界大戰の課題が右の如きものであり、世界新秩序の原理が右の如きものであるとするならば、東亞共榮圈の原理も自ら此から出て來なければならない。從來、東亞民族は、ヨーロッパ民族の帝國主義の爲に、壓迫せられてゐた、植民地視せられてゐた、各自の世界史的使命を奪はれてゐた。今や東亞の諸民族は東亞民族の世界史的使命を自覺し、各自自己を越えて一つの特殊的世界を構成し、以て東亞
前へ
次へ
全12ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
西田 幾多郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング