命の自覺」に傍点]といふものに至らなかつた。國家に世界史的使命の自覺なく、單なる帝國主義の立場に立つかぎり、又逆にその半面に、階級鬪爭と云ふものを免れない。十九世紀以來、世界は、帝國主義の時代たると共に、階級鬪爭の時代でもあつた。共産主義と云ふのは、全體主義的ではあるが、その原理は、何處までも十八世紀の個人的自覺による抽象的世界理念の思想に基くものである。思想としては、十八世紀的思想の十九世紀的思想に對する反抗とも見ることができる。帝國主義的思想と共に過去に屬するものであらう。
 今日の世界は、私は世界的自覺の時代と考へる。各國家は各自世界的使命を自覺することによつて一つの世界史的世界即ち世界的世界[#「世界史的世界即ち世界的世界」に傍点]を構成せなければならない。これが今日の歴史的課題である。第一次大戰の時から世界は既に此の段階に入つたのである。然るに第一次大戰の終結は、かゝる課題の解決を殘した。そこには古き抽象的世界理念の外、何等の新らしい世界構成の原理はなかつた。これが今日又世界大戰が繰返される所以である。今日の世界大戰は徹底的に此の課題の解決を要求するのである。一つの世界的空間
前へ 次へ
全12ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
西田 幾多郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング