の中は旋風《つむじかぜ》の吹き捲《まく》る様な気持で、思いも未だ定まらねば、先生の言葉に対し批評の語を発する事を得せぬ、先生「今の学者には学閥という者がありまして、同じ学校から出た同士とか、同じ目的を持って居る同士とかいう様な工合に友達から友達へ縁を引き、陰然として一つの団体、一つの当派を作って居り、爾して盛んに毛嫌いをするのです、当派の中から出た発明は詰らぬ事でも互いに称揚して大きな事の様に言い做し、寄って集《たか》って広く売り附ける様にしますが当派の外から現われた発明は、非難に非難を加え、何うやら斯うやら信用を失わせて了います、今私の様な独学孤立の人間が、此の様な発明をしたと云って学者の間へ出て行って御覧なさい、一時は今もいう通り、世界中の新聞雑誌にまで書き立てられましょう、けれど私の名が揚がれば揚がる丈、学閥の猜《そね》みは益々加わり、第一に私を山師だといい、私の術を実用する事の出来ぬ様にして了い、夫で足らずば、次には学閥の中から、是はポール・レペルの法よりも一層完全な発明で、実はレペルより先に成就して居たのだ、レペルは窃《ひそか》に其の法を盗んだのだなどと本家を奪いに掛かるもありましょう、中には此の様な法は罪人に姿を変えさするに通ずるのみで詰り犯罪を奨励して国家社会を危くする者だと叫ぶ者も出来、夫は夫は私を滅さねば止まぬのです」
いう所に多少は大き過ぎる言葉もあるけれど、今日の学者社会に幾分か斯様な傾きのあるのは事実らしい、先生は茲まで述べてやや調子を下げ「今日の社会が、私に此の秘術を公《おおやけ》にさせたいとならば少くとも学者社会をば、最う少し真理を愛する様に作り直して来ねば了ません、今の様では縦しや専売特許などの保護法が備わって居ると云っても、私の様な発明は危険で、顔を出す事が出来ぬのです、だから私の発明が何であるか、何の様な秘術であるかという事は誰にも話す事が出来ません、唯貴方だけには、左様さ素人に分る丈の範囲に於いて話しますが、術の一半は電気です、残る一半は薬物の作用です、電気で以て人間の毛を根本から滅して了う事は、大抵の学者が出来る事だろうと思って居ます、けれど実際私程其の事を実地に研究した者はない、私の法に由ると頭の毛を悉く枯らさせて其の皮膚を顔と同様にするのは易い事です、又人の筋肉を永久に伸し又は縮めるも、爾まで困難ではありません、サア是だけ
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