オて幸徳は毎月その機関誌に通信を送っていた。しかし、元来無政府主義者には、個人的または小団体的の運動を重んじて、一国的とか国際的とかの組織を軽んずる傾向があり、国際大会を開くにしても、その選定した土地の政府がそれを許さなかったり、また、各国の同志がそれに参加しようと思っても、政府の迫害や経済上の不如意なぞのいろんな邪魔があったりして、わずか一、二年の間にこの同盟も立消えになってしまった。最近満足に開かれた大会は、前に言ったアムステルダム大会一つくらいのもので、ずいぶん久しぶりに開かれた一昨年の暮れのベルリン大会なぞも、長い間の運動の経験を持った名のある同志はほとんど一人も見ることができなかったほどの、よほど不完全なものであったらしい。
しかし時はもう迫って来た。ことに、ロシアの革命が与えた教訓は、各国の無政府主義者に非常な刺激となって、今までのような怠慢を許さなくなった。
『フリーダム』のこの記事を読んでいる間に、Kがその勤めさきから帰って来た。
「おい、こんな手紙が来たんだがね。」
と言って、僕はコロメルからの手紙の内容と大会の性質とをざっと話した。
「それやぜひ行くんですね。
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