慄えて、とめどもなく涙が出て来た。

 しかし僕も、はいった初めから出る時まで、こんな御馳走ばかり食べていたのではない。
 ちょうどはいる前の日に、『東京日日』の記者から原稿料の幾分かを貰っていたものだから、二、三カ月はどんなに贅沢をしたところで大丈夫だと思っていると、四、五日して看守がもう僕のあずけ金がないと言って来た。そんな筈はない、と言いはってなお調べさせて見ると、はいる時に持っていた金の大部分は裁判所で押えてしまったのだと分った。やはりドイツからでも貰った金だと見たのだろう。
 仕方がない。それからは当分牢やのたべ物でがまんした。
 朝八時頃になると、子供の頭ぐらいの黒パンを一つ、入口の食器口から入れてくれる。黒パンである上に、さらに真っくろに焦げつかして、まだ少し暖かみがある。が、味はない。ぼそぼそもする。僕は二た口か三口でよした。
 前にベルヴィルの貧民窟にいた時、自炊をして、よく近所のパン屋へパンを買いに行ったのだが、黒パンはどこのパン屋にもつい見かけたことがなかった。パリではそんなパンを食う人間はまずないのだ。
 それから一時間か二時間すると、大きな声で「スープ! スー
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