、忘れてしまった。
その他にもまだ、
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〔Encore 255 jours a` taire.〕(まだ二百五十五日だんまりでいなくちゃならない)
〔Vive de'cembre 1923.〕(一九二三年十二月万歳)
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といったように、放免の日を待ち数えたのや、また、
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Ah ! 7 ! Perdu !(ああ、七だ、おしまいだ!)
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と書いて、そのそばに四の目の出た骰子と三の目の出た骰子と二つ描いてあるのもあった。何か不吉の数なのだろう。
それから、これは日本なぞではちょっと見られないものだろうが、
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Riri de Barbes(バルブのリリ[#「バルブのリリ」は底本では「何とかのようなやくざものの」])
Fat comme poisse(何とかのようなやくざものの[#「何とかのようなやくざものの」は底本では「バルブのリリ」])
Aime sa femme(その妻)
dit Jeanne.(ジャンを愛する)
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というのや、また、
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Emile(エミル)
Adore sa femme(命にかけて)
pour la Vie.(その妻を恋いあこがれる)
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という熱心なのもあった。
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Ce qui mange doit produire(食うものは生産せざるべからず)
Vive le soviet.(ソヴィエト万歳)
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とあって、その下にわざわざボルシェヴィキと書いてあるのもあった。
僕も一つ面白半分に、
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E. Osugi.(エイ、オスギ)
Anarchiste japonais(日本無政府主義者)
〔Arre^te' a` S. Denis〕(セン・ドニにて捕わる)
Le 1 Mai 1923.(一九二三年五月一日)
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と、ペン先きで深く壁にほりこんで、その中へインクをつめてやった。
予審へは一度呼び出された。
まだ弁護士の来ない間に訊問を始めようとしたので、さっそく例の手で両肩をあげて見せた。判事はあわてて書記に命じて弁護士を探しにやった。
取調べは実に簡単なものだった。と
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