深刻さが、そのまま裏づけられている、というようなのはほとんどない。裏づけられた実感の方が、その現された考えや言葉よりもさらに一層深い、というようなのは滅多にない。その考えや言葉がそのままただちに実行となって現れなければやまないというようなのはさらに少ない。
僕はこのなまけ者どもの上の特権者だ。監獄人だ。
が、こんなことを一々事実に照らして具体的に暗示し説明して行くことは、この雑誌の編集者の希望ではない。せいぜい甘い、面白可笑しいものという註文なんだ。
つい脱線して飛んだ気焔になってしまったが、ちょっと籐椅子の上で寝ころんで[#「寝ころんで」は底本では「寝ろこんで」]、日向ぼっこをしながら一ぷくして、また初めの呑気至極な思い出すままだらりだらりと書いて行く与太的雑録に帰ろう。
死刑執行人[#「死刑執行人」は太字]
と言ってもやはり、まず思い出すのは、先きに書きかけた「死処」の中の材料だ。これはいずれ物にするつもりであるが、したがって今洩らすのは大ぶ惜しい気もするが、その中のたった一つだけを見本のつもりで書いて置こう。
東京監獄に、今はもういないが、もと押丁というのがいた。看
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