生の拡充である。僕は僕の生の活動の中に、人類の生の活動を見る。
また、かくのごときもっとも有効なる生の活動方向をとっているものは、ただに僕一人ではない。真に自己を自覚し、また自己と周囲との関係を自覚した人々は、今日なおはなはだ少数ながらも、しかもすでに断乎たる歩みをこの道に進めている。盲目者の外は何人も見遁すことのできない、将来社会の大勢を形づくりつつある。
事実の上に立脚するという、日本のこの頃の文芸が、なぜ社会の根本事実たる、しかも今日その絶頂に達したる、かの征服のことに触れないのか。近代の生の悩みの根本に触れないのか。さらに一歩進んで、なぜそれに対するこの反逆の事実に触れないのか。この新しき生、新しき社会の創造に触れないのか。確実なる社会的知識の根底の上に築かれた、徹底せる憎悪美と反逆美との創造的文芸が現れないのか。
僕は生の要求するところに従って、この意味の傾向的の文芸を要求する、科学を要求する、哲学を要求する。
底本:「全集・現代文学の発見・第一巻 最初の衝撃」学芸書林
1968(昭和43)年9月10日第1刷発行
入力:山根鋭二
校正:浜野 智
1998年8
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