はちょうど『議論』の出る予定の頃だと思うが、広告のとれ具合はどうか。雑誌の種類も前のとは大ぶ違うし、それにあまり広告に向くものでもなし、よほど困難なことと察せられる。ただ、今までのお得意にせびりつくのだね。十二月の面会の時には是非雑誌を一部持って来て、せめては足下の働きぶりだけでも見せてくれ。
 英語はやはり続けてやっているか。先生をかえたのは惜しいことをした。足下なぞは自分で勉強する方法を知らんのだから、よほど先生がしっかりしていないと駄目だ。ともかくも僕のロシア語と競争にしっかりやろうじゃないか。僕もあの文典だけは終った。来週から先日差入れの本にとりかかる。
 幽月はいよいよ寒村と断って、公然秋水と一緒になったよし。僕はあの寒村のことだから煩悶をしなければいいがと心配していたが、案外平静なようなのでまずまず安心している。いつかも慰め顔にいろいろと問い尋ねる看守に、かえってフリイ・ラブ・セオリイなぞを説いて、こうなるのが当り前でしょうよと言ってカラカラと笑っていた。しかし例の爪は見てもゾッとするほどひどく噛みへらされてしまった。※[#始め二重括弧、1−2−54]寒村は爪を噛む癖があっ
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