。もしやるなら真面目に一生懸命にやるがいい。そして僕の出獄の頃には一とかどのものにして置いてくれ。
 先月の手紙で大体の様子はわかった。さすがに世の中は春だったのだね。しかも春風吹き荒むという気味だったのね。※[#始め二重括弧、1−2−54]幽月と秋水との情事を指す※[#終わり二重括弧、1−2−55]おうらやましいわけだ。しかし困ったことになったものだ。と言っても、今さら何とも仕方があるまい。善悪の議論はいろいろあることだろうが、なるべく批難することだけは止めてくれ。汝等のうち罪なきものこれを打て。僕などはとうてい何人に向っても石を投ずるの権利はない。
 そんな事情から足下は一人の後見を失い、またほとんど唯一の同性の友人を失ってしまった。今後は守田※[#始め二重括弧、1−2−54]有秋君※[#終わり二重括弧、1−2−55]とか若宮とかの、よく世話をしてくれる人達に何事も相談して、周到な注意の下に行動するがいい。その上での出来事なら、たとえ僕の「将来の運動に関係」しても、また僕の「面目に係わ」っても、僕は甘んじてその責任を分ける。ただ女の浅はかな考えから軽はずみなことをしてくれるな。
 
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