かねる。せっかく都合よく行っているように見える今の家を解散するのも惜しいことだが、もしそうなるなら谷等にこれまでの厚意をよろしく謝してくれ。雑誌を出すか、小田原へ行くか、これは幸徳、安田、および兄などと相談していいように決めるがいい。
静岡からその後何とも言って来ないか。こちらからは、もう一度手紙を出して見たいと思う。前に言った三分の二でも二分の一でもいい、くれとは言わぬ貸して[#「貸して」は底本では「借して」]くれ、と言ってやって見ないか。もっとも、とても駄目だと思うなら、またいやなら止してもいい。少し金がないと本を買うに不便で困る。この困っている実情を述べて、「本当に子と思うなら」と、もう一度泣きついて見てくれ。
金と言えば足下の経済事情はどうなっているのか。いつもいつも自分の勝手ばかり言ってはなはだ済まない。諸君によろしく。さよなら。
トルストイ、イブセン、および『太平記』、今日着いた。
*
堀保子宛・明治四十二年四月二十六日
いい陽気になった。運動に出て二、三十分間ポカポカと照る春の日に全身を浴せていると、やがて身も魂もトロトロに蕩けてしまいそうな気持になる。
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