Zかくすまされては、何とも仕方がないね。これからは月に二、三度も来れば大がい用も足りるだろう。そしてそのかわりにもう少し手紙をくれないか。かまわないから大いに森近夫人式にやるさ。
 この前の面会の時にまたひっこす[#「ひっこす」に傍点]とか何とか言っていたが、それはいろいろ嫌やなことも不自由なこともあろうけれど、なるべくならあまり面倒なことをしないで、今のところで辛棒していたらどうだろう。わずか二た月ばかりのことじゃないか。
 南はどうしている。出たことは出たが、やはり困っていやしないか。そのほかの連中はみなどうした。
 僕は、こんど出たら少し小説の翻訳をやって見ようと思っている。短かいのでやりやすいようなのが、二つ三つ今手もとにある。小説が一番金になりやすくてよかろう。
 兵馬にツルゲーネフとゴーリキーの小説を送るように言ってやってくれ。翁からの手紙によればもう肺結核が二期にまで進んでいるんだそうだね。
 福田、大須賀の二女史から見舞いが来た。会ったらよろしく言って置いてくれ。
 この手紙はたぶん裁判所へ廻らないで、すぐ行くかと思う。さよなら。
   *
 堀保子宛・明治四十一年二月
前へ 次へ
全118ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング