ツて幽月※[#始め二重括弧、1−2−54]故菅野須賀子※[#終わり二重括弧、1−2−55]の行っていたところへ英語をやりに行かないか。勉強にもなるし、また少しは気のまぎれにもなるだろう。お為さんによろしく。真坊はどうしている。
寒いので手がかじけてよく書けない。御判読を乞う。
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堀保子宛・明治四十一年二月五日
一昨日手紙を書こうと思ったら、また用紙がないと言う。そして今日もまたないと言う。いやになってしまう。やむを得ずハガキにした。またさびしいさびしいと言って泣言を書き立てているね。検閲をするお役人に笑われるよ。
手紙はできるだけ隔日に書くこととする。あなたの方も、も少し勉強なさい。二十三日のハガキと二十七日の封書とが着いたばかりだ。
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堀保子宛・明治四十一年二月十三日
保釈はまだ何とも言って来ない。もし許されたらすぐ電報で知らせる。
兄キの子供が死にそうだとか言っていたが、その後どうしたか。いやだなぞと言わずに、たまには行って見るがいい。そして毎度毎度ではなはだ済まないような気もするが、少しは何とかして貰うさ。
面会をああ長く待たせられて、そして、ああ短かくすまされては、何とも仕方がないね。これからは月に二、三度も来れば大がい用も足りるだろう。そしてそのかわりにもう少し手紙をくれないか。かまわないから大いに森近夫人式にやるさ。
この前の面会の時にまたひっこす[#「ひっこす」に傍点]とか何とか言っていたが、それはいろいろ嫌やなことも不自由なこともあろうけれど、なるべくならあまり面倒なことをしないで、今のところで辛棒していたらどうだろう。わずか二た月ばかりのことじゃないか。
南はどうしている。出たことは出たが、やはり困っていやしないか。そのほかの連中はみなどうした。
僕は、こんど出たら少し小説の翻訳をやって見ようと思っている。短かいのでやりやすいようなのが、二つ三つ今手もとにある。小説が一番金になりやすくてよかろう。
兵馬にツルゲーネフとゴーリキーの小説を送るように言ってやってくれ。翁からの手紙によればもう肺結核が二期にまで進んでいるんだそうだね。
福田、大須賀の二女史から見舞いが来た。会ったらよろしく言って置いてくれ。
この手紙はたぶん裁判所へ廻らないで、すぐ行くかと思う。さよなら。
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堀保子宛・明治四十一年二月
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