では足りない。少なくとももう半年は欲しい。
こうなると、今までずいぶん長いと思っていた二カ年半が急に物足りなくなって、どうかしてもう半年増やして貰えないものかなあ、などと本気で考えるようになる。
仕事はある。しかしそれは馴れさえすれば何とでもなる。一日幾百足という規定ではあるが、その半分か、四分の一か、あるいはもっと少なくなってもいい。何と言われてもこれ以上はできませんと頑張ればいい。みんなで相談してひそかにある程度にきめればさらに妙だ。現にこの相談はほとんど最初から、自然にできあがっている。とにかく、できるだけ仕事の時間を盗んで、勉強することだ。
こうきめて以来は滅茶苦茶に本を読んだ。仕事の方は馴れるに従ってますます早くやれるようになる。それに、下等の南京麻ではない上等の日本麻をやらしてくれる。いよいよますます仕事はしやすい。しかし仕事の分量は最初から少しも増やさない。ただもう看守のすきを窺っては本を読む。
かくして僕は、かつて貪るようにして掻き集めた主義の知識をほとんどまったく投げ棄てて、自分の頭の最初からの改造を企てた。
鱈腹食う夢を見て下痢をする[#「鱈腹食う夢を見て
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