と矢代は出し脱けに云ったが、これでは意味をなさぬと知り、またすぐ口を閉じて彼は空を見た。
「ふむ。思いあたることがあるの。」
 と塩野は訊ねた。
「あるね。」
 父を死なしたのは僕のせいかもしれぬのだ、と、危くそんなに云いかかったのも、やっと耐えて彼は黙りつづけた。そして、父の亡くなった夜、母と二人ぎりでいるとき、「お父さん、喜んで死んだんですもの。あんなに喜んでね。」とそう母の呟いた嬉しそうな表情を思い出し、突然躓きかかった痛みを胸に覚えて彼は思わず両手で骨箱を強く握った。彼は傍の千鶴子の体温を強いて腕に感じようと努めながら、この父に二人は許されたのだと思おうとしてみても、悲しさは夕暮の色とともにますます深まって来るばかりだった。何か車の揺れ進む速度につれ、千鶴子を置き去りにして、自分ひとりぐんぐん先へ先へと突き進んで行くような深まる寂しさだった。
「しかし、今日は来て下すって、たいへん有りがたかったですよ。助かった。」
 と矢代は暫くして急にまた二人に云った。胸に押しつけて来る父の骨箱を受けとめてくれているものが、懐中に隠して来た千鶴子の手紙だということも、今は彼には偶然な戯れ
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