姿は絶えず鋭く伸びたり膨れたりした。矢代は、午後からは長く忘れていた畑を打ってみようと思いながら、火鉢に片手を焙り、鉄瓶の鳴るのを聞いていると、ふとある貴重なものの過ぎ通っている静かさを覚えた。冬の日の障子の明るく冴えたその向うで、「ちッちッ」と鳴く鶯の声も、流れ移っていった旅の日の、空を仰いだときどきに感じた郷愁に見えたりした。
暫くすると足音がして、母が矢代の部屋へお茶と菓子を持って這入って来た。午後ならばともかく午前中、厳格な母は矢代にこうしたことは、今までにあまりなかった。
「今日は良いお天気ですね。ひとつ今日は畑を打とうかと思ってるんですよ。」と矢代は母に云った。
「畑を? お珍しいことね。そんな手で出来ますか。」と母は笑った。
窓の外を見上げ差し向いに坐っている二人の傍で、鉄瓶は湯気を上げて鳴り、なお鶯は枝から枝へ飛びわたって、今までひそかに矢代の待ち望んでいた梅の枝まで来た。
「昨夕のこと、お父さんにお話したの。そしたら、お父さんお喜びになってね。もうそれは、ほくほくしてらっしゃるの。」
母もいつもとは違い子供のような言葉でそう云うのを、矢代はああ、あのことかと思っ
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