ね。」
 と矢代は横の千鶴子に笑顔で云った。原子核の核の周囲を旋廻する光りのようなこの高架線の設計図は、誰がしたのか、偶然にしても、たしかに日本の知性の一番明瞭に表現されたものの一つのように思われた。そして、それがとりも直さず、言霊亀板面に顕れた倍数に拡がる音波の函数図形の原形と同じだと云うことも、彼には驚くべきことだった。
「あなたがここの切符を買って下さったというのは、何んでもないことでも、僕にはたいへん嬉しいんですよ。何んだかみそぎをすませた後のようでね。」
 千鶴子がどんな表情をしていようともう矢代には介意ったことではなかった。
「さっきお話になったことね、田辺侯爵のこと、あれ何んでもありませんのよ。あなた鳶だなんて仰言ったけど。」と千鶴子は斜すに見上げまだ怨めしそうだった。
「あ、そうか。あれはそんな意味で云ったんじゃない。あの侯爵の城を僕は見たことがあるので、それが鳶を見るような感じだったんですよ。」
 千鶴子は首を縮め俯向いて笑うと、それからは少し身を矢代の方へよせかけるようにして来た。
「今日はあたしお詫びを云いたいけれど、でも、あなたも残酷な方だったわ。あんなむしむし
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