ら帰って来た多くの青年が、船上から神戸を見て悲しみのあまり泣き出すという、弱まり崩れた心根もやはり同様に自分の中にも潜んでいたのだろうかと、矢代は不快になり、一層悲しく沈むばかりだった。
しかし、それも千鶴子一人がどうやら嗅ぎつけたらしい以外には、塩野も由吉もまだ知らず、席は料理の数が増えるにつれ賑やかになっていった。
「それはそうと、男爵は日本へ帰るつもりがあるのかね。」
と由吉は話を換えて塩野に訊ねた。男爵というのは、サンゼリゼのトリオンフで、初めて矢代が東野から塩野を紹介されたとき、一緒に紹介された同席の平尾男爵のことだろうと矢代は思った。
「さア、どうも男爵は、帰ろうにも帰れないんじゃないかな。よく分らないが。」
と塩野は言葉を濁し、明答を避ける風だった。
「そうかね、しかし、早くひき戻す工作を僕らでやろうじゃないか。枕木にも僕は頼んでおいたんだが。あれだけの人物を、いつまでもパリで腐らしとく手はないと思うんだ。」
「しかし、駄目だなア。」
塩野はそう云ってからまた由吉に対い、意味ありそうに笑いながら、
「それより、君の方が心配だが枕木の方は大丈夫か。」
「いや、あれは
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