国語を使うに越したことはないですが、そこは何んというか、僕だって少しは自尊心も出ますからね。妙なもので、外国にいると自分の国の言葉が、非常に有難くなるんですよ。ですから、日本語を使うと日本人には笑われるけれども、まア、一度はそんな真似も、やってみたくなるんですね。」
事実を云えば、異国にいる日本人の多くの者の争う点は、能ある鷹は別として、その滞在国の言葉が出来るか否かということか、出来ても発音とか読書力とかでまた争い、練達しているものはまた、不思議とどちらが出来るかということで争うのが常だった。
矢代は初めこれらのことも当然だと思い、気にもかからず尊敬さえしたのだが、それがどこでもここでも、同族のものを軽蔑する主要な原因のごとき観を呈している醜さを発見してからは、勉強とは云え、あまりにその修練の人格の無さに腹立たしさを感じ、多少は知っている異国の言葉もそのものの眼の前では、つい彼は使いたくはなくなった。そして、以来頑固にひとり日本語を押し通して用を足す反抗をつづけてみたが、まったく通じない日本語も、行くところどこでも不便少く目的を達したのを思うにつけ、知っている日本語さえ話さぬ西洋
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