、よろしよ。」と云って重い方を奪うように携げると、ステッキを地に引き摺って、人のいない通りを先に立った。
「実に美しい所だなア。」
 と矢代はときどき立ち停り周囲の平原の波を見ながら呟いた。先に歩いていた今井はその度びに矢代の傍まで戻って来て、賞められたことが嬉しいらしく彼も一緒に並んで平原を眺めた。乳房の高まりの連ったような地の起伏が、空に羞らう表情を失わず、嬉嬉として戯れ翻っている賑やかな嬌態で、見れば見るほど平原の美しさが増して来た。
「いつも見てると分りませんが、万ざら捨てたもんでもないでしょう。」と今井は謙遜に云ってまた先に立った。
「いや、たしかに美しい所ですよ。一寸類がありませんね。」
 矢代は疲れも忘れ宿舎へ行くのも惜しまれたほどだった。それも周囲のどちらを見ても美しさは変らなかった。人工の極致とも見える繊細な柔かさで、無限の末にまで届いて祈りのような悲しみが地の一面の表情だったが、それは見ていると、また奔放自由な歓びの線にも見え、清らかな希いに満ちた明け渡っていく世界の明るさにも変って来た。矢代は国境の方の蒼く幽かに薄靄の立っているあたりを指差して、
「あのあたりがつ
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