ていた。矢代は、葬列か凱歌かしれぬこんな光景が暫く眼の前を通過しているのを見ている間に、何ぜともなく久慈を突っつきたくなって来たが、それもじっと胸もとで耐えた。
 人の肩越しで行進を見られぬ見物の女たちは、ハンドバッグから鏡を出してそれぞれ後ろを向き、鏡面に行進のさまを映し出して眺めていた。
 千鶴子や真紀子もそれに倣い鏡を空にかざした。久慈と矢代は爪立ち疲れてふと顔を見合すことがあったが、ぎりぎりとせっぱ詰った云われぬ冷たい表情ですぐ視線を反らせた。その度びに、どちらも、「ふん。」と一瞬相手をせせら笑うような唇の動きを感じ、何か一言いえば生涯の破れになるかと思われる悪寒が、白白しく二人を黙らせつづけるのだった。
 そのうち高い建物の上の方から拡声器の革命歌が響きわたって来ると、行進の歩調が揃って来た。しかし、またそれがすぐ国歌に変ってマルセエーズが放じられた。見ている群衆はどちらの歌が空に響きわたっても同じで、誰も声を立てず、すでにこのような訓練が行きとどいた後のように静かだった。
「何か起るのかしら、見ている人、嬉しそうでもないのね。」
 と真紀子は不安な顔で久慈に訊ねた。
 進行
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