間を信用するという心の方が、もっと通用するよ。その方が大切だ。」
 とこう矢代は久慈に定めつけてみたいのである。しかし、こんなことも今は無用の返答だと思い止まった。そして、
「君はいつごろ日本へ帰るのだ。」と彼は訊ねた。
「さア、そ奴はまだ考えていないね。しかし、まア、僕ぐらいはここで沈没してみるのも、良かろうと思っているんだ。」
 久慈は切り裂いた鮭の中から小骨を抜きとりながら、
「これ日本のかもしれないぜ。今日のは馬鹿に美味いや。千鶴子さん、鮭をフランスへ入れるのに手伝ったって云ってたが、こ奴かな。」
 と云って矢代を見て笑った。そう云えば、このあたり一帯のカフェーにあるコーヒー茶碗や食器などは、皆どこのも日本製ばかりだと聞いたことも矢代は思い出され、よくもあの地球の端からここまで満ちて来たものだと、街の拡がりを今さらのように眺めてみるのだった。


 真紀子が来てから少し遅れて千鶴子が来た。千鶴子は、ほッと洩れる息を押し込めたような気の張った快活さで、
「明日帰るんだと思うと何んだかそわそわするのよ。そのくせ何もすることないの。」
 と云って腰を降ろそうとした。久慈はすぐこれから
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