情だった。
 久慈は度び度び美青年の自動車を狙って衝った。青年の猛烈な攻撃が頻発して来ると、久慈は真紀子への嫉妬も嵩じ、突然首を廻して千鶴子の車へ突撃したりした。こんなにして戯れも時とともに次第に意識を変えて来たときである。久慈はまたも千鶴子を狙って突きかかろうとした瞬間、
「あッ。」
 と叫びを上げて真紀子が傾きよったと思う間に、青年は久慈のハンドルを突き飛ばした。
「こ奴ッ。」
 と久慈は思い、捻じれた首を立て直して青年に狙いをつけた。すると、また青年は隼のように久慈に向って飛びかかって来た。久慈と青年との間で火華の発する度数が増すにつれ、真紀子はもう叫びも上げなくなってしまった。二人の争いがだんだん人目に立って来ると、矢代も見るに見かねたものか、今度は彼がその青年に突撃を開始した。しかし、何んといっても青年の操縦は見事だった。これに敵うものはなく誰も後を追っ馳けるものもいなかった。青年は巧みに群がる車の狭い隙間をひらりひらりと体を翻し、遠くへ存在をくらませては、機を見て不意に殺到して来て引き上げるばかりだった。
 久慈はいら立たしくなると悲鳴を上げる女へぶっつけたり、千鶴子の体へ
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