らしい声がした。久慈は鍵穴へ口をつけ、「僕、久慈だ。久慈。」と呼んでみた。鍵の廻る音がしてから問もなく千鶴子は眠そうな顔でドアを開けた。
「遅くから失礼、一寸、急用が出来たのでね。」
 と云って久慈は、千鶴子の顔を見ず中に這入り椅子に腰かけた。海老色のガウンを着た千鶴子は寝台の裾の方に坐って、
「もう夜が明けるころよ。よく寝入っていたのに失礼ね。」
 と両頬を撫でながら不平そうな笑顔だった。
「今夜きりでもう起さないから一寸つき合ってもらいたいんだ。どうも弱ったんだよ。」
 久慈は椅子の背へ頭を倚らせるいつもの癖を出し、幾らか馬鹿らしそうな微笑で何から話せば良かろうかと考えた。
「どうしたの。お酒まだ醒めないんじゃない。そんならいやよ。」
「いや、酒は醒めてるから大丈夫だ。矢代にも僕の来たこと黙ってるから、君もそれだけは云っちゃいけないよ。」
 こう云い終ってから、しまったと久慈が思った瞬間、もう千鶴子の顔色は変っていて今までの眠そうな色はなくなった。
「君、心配しなくたっていいよ。僕の来たこと知れたってどこが悪い。そんなことが悪いようなら今ごろ来るものか。」
 久慈は強く畳みかけるよ
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