ばせようがためかもしれぬと久慈は思った。
「良い御機嫌だね。」
 久慈は暫くしてからまた一座に加わった。しかし、そのとき、今までぴちぴち跳ね上るように饒舌っていた真紀子は、急にがくりと千鶴子の膝の上へ折れ崩れて泣き出した。
「あんなことはもう無いのだわ。あんなこと、みんな夢だったんだわ。」
 あまり激しい真紀子の変化に誰もびっくりしている様子だったが、主人と離別して来ている淋しさの噴きこぼれた乱れであろうと、手をつかねた視線のまま蠢めく真紀子の際立った背の白さを眺めるばかりだった。
「もう眠みなさいよ。今夜はこの人疲れてるんだ。」
 久慈は真紀子をひき起そうとして寄ってゆくと、気を利かした高は立ち上って帰る挨拶をみなにした。
「いいんですよ。あたし、泣いたりして御免なさい。何んでもないの。」
 謝る真紀子を千鶴子と矢代は慰めながら立って帰ろうとした。真紀子はそれも引きとめたが、もう十一時を過ぎたからというので、皆はそれぞれ部屋の外へ出ていった。潮鳴りの退いたような静かな廊下に立った久慈と真紀子は、顔も見合さずまた部屋へ戻って来た。真紀子はもう久慈に物を云おうともせず寝台の上へ倒れてまた
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