かかろうともせず、もう幾十回となく手がけたこの寺院の陰翳を微笑のまま見上げていた。東野と久慈は隣り合せに腰かけているものの、どちらか一つ感想を口に出せば、忽ち意見の衝突で捻じ合う危惧を感じ、顔を合さず黙っていた。無数の鳩が羽音の旋風をたてて廻っているのを、その方向に真紀子は顔を向けつつ句をひとり考えているらしかった。
「どうです東野さん。俳句でも作りましょうや。」と久慈は云った。
「まア待ちなさい。この建物、見れば見るほど俳句に似て見えて来るんだ。妙なものだなア。」
 と東野は足を組み替えてまた仰いだ。久慈はにやりとしながら、
「これが蛙飛び込む水の音かね。」と云って笑った。
「空の音だよ。僕はこれまでゴシックのお寺を沢山見て来たけれども、どれもみな垂直性ばかり重んじているのに、ここのはそんな精神の偏見がない。翅となっている斜線がそれぞれ本態から自立して横の空間の意識を満足させているよ。何んとなく、雪の結晶に似てるじゃないか。」
「あたしもさきから、日本の生花の立花と似てるように思ってましたわ。」
 と真紀子は東野に云った。
「そうそう、立花とはうまいなア。あなたは俳句はお上手でしよう
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