東野との方が前からの交際であったから、真紀子だけ久慈は東野に紹介しかけたとき、ふと塩野も真紀子と初めてのことに気づいて彼にも紹介した。
四人は細長い食台に一列に並んでそれぞれ食べたいものを註文した。見渡したところ、いつもとこの料理店は違わず働いていたが、窓の外いちめんの左翼の大海嘯のまっ只中に突き立っているさまは、ただのありふれた日常の生活ではなかった。いつも黙黙とした品位のある老齢の伯爵夫人は、カウンタアの所に坐ったまま笑顔を人に見せず、また誰とも話をしなかった。頭の上に帝政復興の寄附金を集める箱が傾いてかかっている下で、ボーイの立ち働く姿を見ながら、少しでも使用人の袖口から襯衣が出すぎているのを見附けると、夫人は黙って指差して直させた。使用人の中のロシア革命を見て来たものたちは忠実に働いたが、パリの風に馴染んだまだ若いものたちは、一家の裾を濡らすように下から上へと色を変えた。
あるとき、ここに使われていた二十二三のボーイで、反抗して家を飛び出て他家へ入ったのが、突然この店へお客となって現れ、
「おい、スープをくれ。」
と昂然とした元気で命じたことがあった。命じられた方は初めは
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