森まで人工だから、僕らこれでどこまで胡魔化されてるか、もう分らないな。こんなになると日本へ帰ってから、日本がつまらなく見えて困るぞこれや。」
 ぼそぼそ独言をいうように呟きつつ歩く矢代の前へ、鳥の糞が落ちて来た。しかし、千鶴子は、森の人工であろうが自然であろうが少しも意に介しない様子で、ときどき男女の一組が草の中に横わっていても、その傍を快活に除けて歩いた。森の中には自動車道が縦横についていた。千鶴子は樹の間から道が少しでも見え始めると、すぐまた自動車の音のしない反対の奥の方へ自分から進んだ。
「こんなにお昼だと道なんか迷うほど面白いわ。もっと奥へ行きましょうね。道はうるさくって。」
 こう云いながら行く千鶴子の後から、これでは案内されるようだと矢代は思って苦笑するのだった。そのうちあたり一帯背丈を没するほどな蕨の密集している原の中に這入ってしまった。そこを千鶴子はひるまず、両手で葉を頒けつつ突き抜けようとした。
「一寸待ちなさいよ。これやみな蕨《わらび》ですよ、素晴らしい蕨だな。」
「これ蕨? 羊歯じゃありませんか。」
「いや、蕨が延びるとこうなるんです。籠を編む、ほら裏白とか何んと
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